山留めとは?
「これだけは知っておきたい山留めの知識」

山留めとは、地盤を掘削する時に周りの地盤が崩れないように、又、建物が倒れないようにする「構造物」の事です。
山留めで設ける壁の事を山留壁と言います。山留壁だけで崩壊を止める事が出来ない場合に壁を支えるのを支保工と言います。

山留め構造物は、
「山留め壁」と「支保工」
から構成されます。

地盤を掘削する事を「根切り」といい、地盤状況により山留め工事の要否は変わりますが、一般的に掘る深さ=根切り深さが 1.5m以上から30m程度以浅で必要とされます。

山留壁

支保工

根切り床

(1)山留工法の種類

1.地山自立工法

堅い地盤、岩盤等では掘削しても自立可能な深さまでは掘削ができる

2.オープンカット工法

土質条件、地層面で検討が変わるが一般的に角度45度で掘削を行う

3.法付けオープンカット工法

法面(斜面部分)を付けて大きく掘削していく事ができる

4.山留め壁を用いた工法

土は種類によって重量が変わります。更に雨など水分を含んだり
天候や気候により剛性も変わってきますので注意が必要

5.山留め壁に
支保工併用した工法

6.山留め壁に
バックアンカーを併用した工法

(2)山留め壁の種類

1.親杭横矢板壁工法

剛性とは山留めがどの程度耐える事が出来るか耐久性のようなものです

親杭(H鋼材)を等間隔で地中に打込み親杭と親杭の間を木製の横矢板を掘削しながら差し込んで山留の壁を作る。木製の横矢板を使用するため、地下水の流れを止める事は出来ない。また、軟弱地盤には不向きです。
他の工法に比べコストが安く、小規模の工事に適しています。

2・鋼矢板(シートパイル)壁工法

鋼製の板状になった杭(シートパイル)を地中に打込み山留壁を作る工法で、止水性が高く地下水のある場所や河川、海上等の工事に適しているが、剛性はあまり高くないため山留壁の変位が大きくなる。材料が比較的高価なため、コスト面も高くなる傾向がある

3・ソイル セメント柱列壁工法

SMW(ソイル ミキシング ウォール)工法も同じで止水の山留め壁としてよくもちいられる工法で、土とセメントミルクをよくかき混ぜた柱を連結し壁を作る工法で、更に剛性を高めるためにH鋼材の芯材を使用する。 止水性や剛性にも優れ比較的に深い掘削工事に適しているが、大型重機を使用しコストが高くなり施工にも時間がかかのがデメリットとなる。

SMW連続壁の施工ピッチにおいては3種類あり、主にH鋼芯材の間隔が隔孔の場合は@900(H200×100の場合は@700まで)が多く、芯材は細幅系列のH鋼材が多く使用される。

その他の施工ピッチとして

  • H鋼芯材の間隔が全孔の場合
    @450mm(@350)
  • H鋼芯材の間隔が3孔2本の場合
    @675mm(@525)

4・鋼管矢板壁工法

5・場所打ち杭壁工法

6・その他 規制コンクリート壁工法

鋼管矢板や場所打ち杭壁工法、又は規制コンクリート杭を連続して打設しながら、壁を作っていく方法などがあります。止水性や剛性にも優れ比較的に深い掘削工事に適しているが、非常にコストが高くなる。

◆ 山留め支保工の種類

1.水平井形切梁工法

鋼製山留支保工材で切梁や腹起しなどを井形に設置する。現場の状況に応じて支保工の配置、段数などを変動することで深い掘削でも土圧を全体に抑え安定感があるため実績も多い。
一方で支保工が掘削機械や躯体工事の支障となり支保工の解体高さや切梁、棚杭等の配置に計画段階から検討が必要である。

土留名称図

2・アンカー工法

グラウンドアンカー工法は、残置式と除去式アンカー工法があり、山留仮設の他にも斜面安定や構造物の転倒防止や浮き上がり防止にも使用される。

掘削面に切梁が無いので掘削が容易であり、高低差があり偏土圧が作用する場合や直線形状の掘削にも適応が可能な工法で、切梁が無いので地下工事の効率が良くなる
デメリットとしては山留掘削周辺にアンカー打設可能な敷地と良質な安定地盤が必要で、既存構造物や地下埋設物があると適用が困難である。施工や材料コストも高くなる。

3・アイランド工法、斜梁工法

法付けオープンカット方式などで、躯体の中央分を先に造った後に躯体から切梁や斜梁を設置して、地盤を根切りして残りの躯体を造る山留工法です。

斜梁工法とは、先行して造った躯体から斜めに切梁を設置したり、又は、控え杭を打設して任意の角度で、斜めに切梁を設置(斜梁)した支保工です。

4・タイロッド・タイブル工法

山留工事におけるタイロッドとはアンカー工法の一種で、港湾、河川の護岸、堤防工事によく使用される。山留壁の背面に控え杭(控え壁)を打設し所定の深さにタイロッド鋼とターンバックルで引張ことにより山留壁と控え杭を連結する工法で控え杭の支持力で山留壁の変形を抑える。
山留壁背面に控え杭を設置するため広い敷地が必要となる。またタイブルとは引張材がPC鋼のより線であり予め設計の長に応じた長さの1本物で施工は容易である

参考文献
  1. 日本道路協会 : 道路橋示方書・仮設構造物指針・杭基礎施工便覧・鋼管矢板基礎設計施工便覧
  2. 日本建築学会 : 山留設計指針・建築地盤アンカー設計施工指針同解説・建築工事標準仕様書同解説
  3. バイブロハンマ工法技術研究会 : バイブロハンマ設計施工便覧
  4. 国際圧入学会 : 圧入工法設計施工指針
  5. 日本建設機械化協会 : 大口径岩盤削孔工法の積算
  6. SMW協会 : SMW連続壁標準積算資料