路面覆工、
仮設桟橋の検討・設計から
施工計画書作成まで

 路面覆工(建込み簡易土留除く)や仮設桟橋の場合は、社団法人 日本道路協会の「道路橋示方書」及び「道路土工-仮設構造物工指針」「杭基礎施工便覧」等の文献が多く引用されているので、必ずそろえておくとよい。さらに近年は環境汚染や希少動植物の保護等の参考書物などもそろえておくとよいでしょう。

(1) 路面覆工計画の検討

路面覆工の計画は、設計図、標準図等をもとに道路幅員、交通量、作業時間、覆工計画高や、その他現場の各種状況、埋設物や支障物等を検討し、施工方法の選定や施工範囲のブロック割りを計画していく。
また山留工事同様に計測管理計画や対策の設定も計画しておく必要がある。

1・目的に応じた路面覆工の検討を行う

設計構造物の「意匠図・構造図・柱状図・現場地図」等から根切り深さや大きさを確認し、仮設山留の範囲を検討し、路面覆工の形状を決めて、土留杭や桁受け材、又は受け桁や桁受け材等の計画を行う。
また、指定仮設の場合は仮設構造計算書の確認や、現場設置個所の埋設物や架空線等を確認し、支障が生じるようなら変更の検討を行う

道路管理者や交通管理者の指示事項、道路の使用方法や安全設備、作業時間等を事前に協議を行う。
路面覆工の形状や組合せ、土留壁においてもいくつかの種類があるので、目的や使用期間、現場状況に合わせて計画を行う。

2・路面覆工の使用部材の検討を行う

  1. 覆工受桁の検討
  1. 一般的に鋼製覆工板は1m×2、や1m×3m、又はPC覆工板は2m×2m等があり目的や大きさに合わせどれを使用するか決める。
  2. 覆工受桁の検討は、車両走行方向の荷重を受桁と平行にかかるようにして、死荷重や衝撃係数を考慮した最大曲げモーメントの合力(荷重)を、桁受け支間長の作用点で発生する活荷重の最大モーメント又はせん断力を求める、使用するH鋼材の規格数値比較して検討する。

・最大モーメント(Mmax):∑P

・最大せん断力(Smax):Pxy

  1. 曲げ応力度やせん断応力度を計算後、許容曲げ圧縮応力度、許容せん断応力度値を、規格鋼材の数値と比較し検討する。その他にたわみ量(最大モーメントに対する等価等分布荷重を求めたたわみ量とする)等も検討していく。
曲げ応力度(σ) Mmax Zx
せん断応力度(τ) Smax (H- 2・t2)・t1
σ 受桁に作用する曲げ応力度(N/mm²)
Mmax 受桁に作用する最大曲げモーメント(kN・m)
Zx 受桁部材の断面係数(cm²)
σca 許容曲げ圧縮応力度(N/mm²)
l 支間長
b 受桁部材のフランジ幅(mm)
τ 受桁に使用するせん断応力度(N/mm²)
Smax 受桁に作用する最大せん断力(kN)
H 受桁部材の高さ(mm)
t1 受桁部材のウェブ厚(mm)
t2 受桁部材のフランジ厚(mm)
τca 許容せん断応力度(N/mm²)
たわみ量(δ) 5・W・L⁴ 384・E・I
δ たわみ量(mm)
W 等価等分布荷重(kN/m)
L 支間長(m)
E 受桁部材のヤング係数(kN/m²)
I 受桁部材の断面二次モーメント(cm⁴)
δa 許容たわみ量(mm)
等価等分布荷重(W) 8・Mlmax・li
W 活荷重による最大曲げモーメント(kN・m)
Ii 連行荷重の影響による割増係数
L 支間長
ワンポイント

ややこしいですよね!!でも何度も出てくる言葉なので、「曲げモーメント」「せん断力」「たわみ」をイメージで覚えると、計算はできなくても、計算の流れや結果が見えるようになってきますので、何度も計算書を見る事をおすすめします。

モーメントとは物体を回転させる力の大きさを表す

例えば図で同じ体重の人Pが左右の長さの違うシーソーに乗った場合 P・L1<P・L2 となるので、Bの人がモーメントが大きいという事になる。

曲げモーメントとは部材を曲げようとする力をいいます

例えば図で曲げモーメント(M)は荷重(P)が大きい程、またスパン(L)が長い程大きくなる。そしてL1=L2 の時に曲げモーメントは最大となる。

  • 「曲げ応力度とは「曲げモーメントを部材の断面係数で割った値です。

たわみとは、曲げ部材が荷重を受けて変形した元の点からの距離をいいます。

せん断力とは、部材の軸に対して直角方向に力がかかる時その面に沿って部材を切断しようとする力を言います。

  • 「せん断応力度」とはせん断力を荷重に対して直角方向の部材の断面積で割った値を言います。(H鋼の場合はウェブの断面積である)
  • 梁とは、軸に対して直角方向から荷重を受け曲げ作用に抵抗する部材の事を言い、「単純梁」「片持ち梁」「両端固定梁」等がある。
  1. 桁受けの検討
  1. 桁受けの検討は、受桁にかかる荷重による最大せん断力を桁受けの全体幅に換算して、全死荷重の1/2が桁受け軸の直角方向に分布する支間の単純梁として計算する。受桁と同様に桁受けの設置本数での曲げ応力度やせん断応力度を求め、H鋼材の規格数値と比較して使用する鋼材を検討する。
  1. その他使用ボルトの検討なども行う

ボルトに対するせん断力

3・施工計画の検討、作成

現場設置個所の位置確認、道路の埋設管、ケーブル等が無いか確認し設置する。

  1. 埋設物や情報ボックス、架空線等が無いか確認する
  2. 路面覆工と道路高さの擦りつけに問題が無いか確認する
  3. 擦りつけは5%以内

  1. 掘削を行い桁受け、受桁、覆工板と設置していき、埋め戻し、仮舗装を行い設置を完了する
ワンポイント

路面覆工工事でよくあるトラブルは、路面覆工アスファルトの剥がれ、路面覆工枠の沈下による段差や、覆工板のガタツキによる騒音、更には覆工ずれ止めに材の傾き等により覆工板が収まらないなどとありますが、これらの対策方法は、設計の段階ではおり込まれてはいませんが、それぞれのトラブルに対してそれぞれの対策方法がありますので、計画の段階から提案していくことが大事です。

(2) 仮設桟橋(構台)計画の検討

仮設桟橋の場合も路面覆工と同じく、社団法人 日本道路協会の「道路橋示方書」及び「道路土工-仮設構造物工指針」「杭基礎施工便覧」や、建築仮設の場合は、社団法人 日本建築学会の「鋼構造設計基準」「建築基礎構造設計指針」等の文献が多く引用されているので、そろえておくとよい。さらに近年は環境汚染や希少動植物の保護等の参考書物などもそろえておくとよいでしょう。

1・目的に応じた仮桟橋、構台を検討する

設置個所の地形や環境に適合した構造とし、再荷重・作用外力・洗堀等に対し安全性を確保し、桁のたわみや支持杭の鉛直または水平変位に注意するほか、支間が多くくなり部材も大きくなる場合はリース橋との経済比較等も検討する。

ワンポイント

土木と建築とでは多少考え方が違うので、それぞれ区別して検討したほうがよいでしょう。 また、部材の名称等もちがうので、併せて理解しておきましょう。

土木の場合

建築の場合

2・仮桟橋の設計検討

工事用交通道路として使用されると同時に、工事機械の作業台としても使用されるため、設計荷重を決めるのに当たっては、T荷重の他に載荷される大型工事用機械についての水平荷重や、流水・波浪・風などによる水平荷重が予想される場合は水平力に対する検討もしなければならない。考慮しなければならない。また、河川に設置されるものは、河川管理者の構造規定に従い、できるだけ流水を阻害しないような構造が良い。

  1. 荷重
    死荷重、活荷重、衝撃荷重を原則とする
  2. 幅員
    最低4mで、対面交通であれば8mとした方がよいが、工事用機械の設置面積も考慮して決定する。受桁間隔は一般的に覆工板に合わせて2m~3mが多い。
  3. 杭の間隔
    橋軸直角方向の杭間隔は桁間隔と合わせて2m~3mが標準となるが、橋軸方向は5m~6m程度が一般的であるが、河川の場合は河川管理者と十分な打ち合わせが必要となる。
  4. 最大勾配
    最大の勾配は6%が原則であるが、6%を超える場合は、勾配による水平分力を水平荷重に付加して検討するとともに、綾構等で橋軸方向の補強をする。
  5. 桁下空間
    種々の制約条件があるので、関連管理者と十分な協議が必要。例えば河川上の仮桟橋であれば、施工期間に予想される最高水位に1m程度の余裕高を加えた高さや、航路帯等も考慮した空間を確保する。
  6. 覆工受桁の支間
    支間は5m~6m程度が一般的だが、杭打機等の作業機械の性能、施工方法を考慮する。ただし支間が12m程度を超えると対応する部材(H鋼材等)が無く、12m程度が限界であるが、リース橋(プレガーター橋等)を利用することで15m支間の施工も可能となる。
    (注記:今回の指針で示す適用範囲は支間15mまでである)

    また、覆工受桁の死荷重、活荷重、衝撃荷重を載荷させた単純ばりとして検討し、活荷重による最大たわみ量はスパンの1/400以下で、かつ25mm以下でなければならない。
  7. 支持杭の支持力の検討
    杭は桁受け材の最大反力に対し十分な支持力を有し、杭の許容支持力は「土留壁及び中間杭の支持力により計算する」とある。
  8. 水平荷重
    通常路面覆工に使用する杭は土留壁による地盤反力等が十分に期待できるため水平荷重に対する検討はいない。仮桟橋の支持杭では地盤が軟弱な場合や、杭頭部の突出長が長い場合が多く、橋軸直角方向に対して水平荷重に対する検討を行う必要がある。(橋軸方向=走行方向は多数の杭が覆工受桁で連結されている安全と考える)
ワンポイント

支持杭のH鋼材の強軸方向又は、弱軸方向のどの向きに使用されているかによりどの断面二次モーメントを用いるかを注意しなければならない。

強軸:フランジに直角に荷重が作用する場合

弱軸:ウエブに直角に荷重が作用する場合

  1. そのた部材
    その他にも、斜材・水平材の検討や、ボルトの検討を行う

(3) 施工計画の検討、計画書作成

1・施工計画の検討、作成

  1. 計画や工法に応じて重機の選定、機材の選定を行い施工計画の検討、計画書作成を行う
  2. 作業工程に合わせ、いくつかの工程に分けて作成し全体の施工計画書を作成する

    【サンプル】

    • 施工概要
    • 安全衛生管理体制
    • 安全衛生管理計画
    • 工程表
    • 数量表
    • 施工フローチャート
    • 施工計画図(作業ステップ図)
    • 作業手順書(特車搬入、重機組立、全体作業、個別作業等)
    • 使用資機材一覧
    • 使用資材、機材カタログ
    • SDSシート(化学物質セーフテ ィデータ シート)
  3. 各作業に分けて工程表を作成する
  4. 施工全体の作業概要を作成する
    ワンポイント

    全体作業概要を省いて、個別作業の手順書でも構わない。

    【サンプル】1.作業フロー

    2.特車搬入

    4.重機組立

    6.導杭導枠設置

    7.鋼管支持杭打設

    8.鋼管杭溶接

    10.動的支持力確認

    12.桟橋上部設置

    14.覆工板、高欄設置

  5. 個別作業手順書を作成する
    1. 特殊車両搬入手順書
    2. 重機搬入組立手順書
    3. 仮桟橋仮設手順書
    4. 鋼管杭溶接手順書
    5. ボルトトルク管理手順書
    6. 溶接品質管理手順書
    7. その他にも、支持力計算文献や支持力早見表や、化学物質のSDSシートや使用資材や機材のカタログ等を添付します

2・仮桟橋の点検表や維持管理計画の作成

  1. 仮桟橋設置完了後の点検表や使用中の点検管理計画等も計画しておくとよいでしょう。
    その他にも異常時や地震、台風時の点検等も事前に計画しておきます。
参考文献
  1. 日本道路協会 : 道路橋示方書・仮設構造物指針・杭基礎施工便覧・鋼管矢板基礎設計施工便覧
  2. 日本建築学会 : 山留設計指針・建築地盤アンカー設計施工指針同解説・建築工事標準仕様書同解説
  3. バイブロハンマ工法技術研究会 : バイブロハンマ設計施工便覧